敬天愛人フォーラム21 西郷隆盛に学ぶ
南洲翁遺訓

西郷隆盛の名言

短く心に残る言葉を、出典の条番号とともに。全文と現代語訳は各条のページでお読みいただけます。

西郷隆盛は生涯に一冊の著書も残していません。今日「西郷隆盛の名言」として広く知られる言葉の多くは、旧庄内藩の関係者が西郷から直接聞いた話をまとめた『南洲翁遺訓』に由来します。ここでは遺訓の中から、短く心に残る言葉を条番号とともに選びました。各条の全文と現代語訳は、リンク先でお読みいただけます。

天と人

道は天地自然の道なるゆえ、講学の道は敬天愛人を目的とし、身を修するに克己を以て終始せよ。

南洲翁遺訓 第二十一条

学問の道は「敬天愛人」を目的とし、自分を修めるには、己に克つことを終始心がけよ。「敬天愛人」の四字が遺訓に現れるのは、この条です。

天は人も我も、同一に愛し給ふゆえ、我を愛する心を以て人を愛する也。

南洲翁遺訓 第二十四条

天は他人も自分も平等に愛してくださる。だから、自分を愛する心をもって人を愛しなさい。「愛人」の心を最も端的に語った一節です。

人を相手にせず天を相手にせよ。天を相手にして己れを尽し、人を咎めず、我が誠の足らざるを尋ぬべし。

南洲翁遺訓 第二十五条

人を相手にするのではなく、天を相手にせよ。天に対して自分の誠を尽くし、人の非をとがめず、自分の真心の足りないところを反省せよ。

己に克つ

己れを愛するは、善からぬことの第一也。

南洲翁遺訓 第二十六条

自分さえよければよいという心は、もっとも良くないことである。修業ができないのも、事業が成らないのも、過ちを改められないのも、みな自分を愛することから生じる、と続きます。

総じて人は、己れに克つを以て成り、自ら愛するを以て敗るるぞ。

南洲翁遺訓 第二十一条

人は自分に克つことによって成功し、自分本位に考えることによって失敗する。事業を始めて七、八割までは成し遂げても、残りを終えられる人が少ない理由を、西郷はこう説きます。

命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也。此の始末に困る人ならでては、艱難を共にして、国家の大業は成し得られぬなり。

南洲翁遺訓 第三十条

命も名も官位も金もいらないという人は扱いに困る。しかしそういう人でなければ、困難を共にして国家の大事業を成し遂げることはできない。遺訓の中でも、とりわけ広く知られた言葉です。

正道を踏む

事大小と無く、正道を踏み至誠を推し、一時の詐謀を用う可からず。

南洲翁遺訓 第七条

事の大小にかかわらず、正しい道を踏み、真心を尽くし、一時しのぎの策略を用いてはならない。正道は回り道に見えても、先に行けば成功は早い、と結ばれます。

正道を踏み、国を以て斃るるの精神無くば、外国交際は全かる可からず。

南洲翁遺訓 第十七条

正しい道を踏み、国を賭けて倒れても行うという精神がなければ、外国との交際を全うすることはできない。

作略は平日致さぬものぞ。

南洲翁遺訓 第三十四条

策略は、ふだんは用いないものだ。東京を去るとき弟の従道に「これまで少しも策略をしたことがないので、跡は濁るまい」と語ったという逸話が、この条に記されています。

人と政治

人は第一の宝にして、己れ其の人に成るの心懸け肝要なり。

南洲翁遺訓 第二十条

どんなに制度や方法を論じても、行う人が立派でなければうまくいかない。人こそ第一の宝であり、自分がその人物になるよう心がけることが何より大切である。

租税を薄くして、民を裕にするは、即ち国力を養成する也。

南洲翁遺訓 第十三条

税を少なくして国民の生活を豊かにすることこそ、国力を養うことである。財政が苦しくても、上の者が損をして下の者を苦しめてはならない、と続きます。

万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して、人民の標準となり

南洲翁遺訓 第四条

国民の上に立つ者は、身を慎み、品行を正し、贅沢を戒め、節約に努め、仕事に励んで人々の手本とならなければならない。

文明とは道の普く行はるるを、賛称せる言にして、宮室の荘厳、衣服の美麗、外観の浮華を言ふには非ず。

南洲翁遺訓 第十一条

文明とは、道が広く行われていることを称える言葉であって、建物の立派さや衣服の美しさ、見かけの華やかさを言うのではない。

真の機会とは、理を尽して行ひ、勢を審かにして動くと云ふに在り。

南洲翁遺訓 第三十八条

本当の機会とは、道理を尽くして行い、時の勢いをよく見きわめて動くことにある。偶然に頼って成した事業は長続きしない、と西郷は言います。

漢詩に残る言葉

遺訓のほかに、西郷自身が詠んだ漢詩にも、よく引かれる言葉があります。

幾歴辛酸志始堅 丈夫玉砕愧甎全
一家遺事人知否 不為児孫買美田

漢詩「偶成」

幾たびも辛酸を経て志は初めて堅くなる。男子たる者は玉となって砕けても、瓦となって全うすることを恥じる。わが家に残す教えを人は知っているだろうか。子孫のために美田を買わない、ということだ。「児孫のために美田を買わず」の句として知られます。

生死何ぞ疑わん 天の付与なるを、願わくは魂魄を留めて 皇城を護らん

漢詩「獄中有感」(沖永良部島にて)

沖永良部島の牢で死を覚悟したときの詩の結びです。生きるも死ぬも天の与えるもの。全文は沖永良部島の西郷隆盛でお読みいただけます。

言葉を読むときに

遺訓は、西郷の話を聞いた人々の記録です。一節だけを切り取ると意味が変わることがあるため、気になった言葉は、ぜひ各条の全文と現代語訳をあわせてお読みください。